東日本大震災及び大津波によってもたらされた、気仙沼市、南三陸町への災害被害の実態を記録・調査し、それらを復旧、復興活動において有効に活用できるよう取りまとめること。
今後も想定される地震、津波災害に向けて、防災教育や減災教育のための資料として活用可能なように震災被害の実態を取りまとめること。
東日本大震災被災という重大な出来事を、地域の重要な歴史、文化的記憶として後世に伝えるとともに、日本国内、あるいは世界で行われている災害対策事業等への具体的な資料提供を行うこと。
リアス・アーク美術館は震災発生直後から、この命題と向き合い、学芸係が中心となって、約2年間の震災被害記録、調査活動を行いました。
被災現場で撮影した写真は約30,000点、収集した被災物は約250点、さらに書き記した調査記録書等の膨大な資料をこの活動から得ています。
そして2013年4月3日、それらの資料から厳選した「結晶」としての資料をここに常設展示、公開するに至りました。
この常設展示は、「東日本大震災をいかに表現するか、地域の未来の為にどう活かしていくか」というテーマで編集されています。
私たちに与えられた役割は、単に記録資料を残すことではなく、それを正しく伝えていくことです。伝えるためには「伝える 意志と伝わる表現」が必要です。私たちは、これまで美術館として蓄積してきたノウハウを駆使し、多様な視点で東日本大震災を表現することに努めました。
展示資料は、当館学芸員が被災現場で撮影した写真203点、同様に収集した被災物155点、歴史資料等137点が収められています。
前半は【被災現場からのレポート】とし、直後からの被災現場の多種多様な状況をまとめています。 また後半は【被災者感情として】【失われたもの・こと】【次への備えとして】【まちの歴史と被害の因果関係】の4テーマで構成されています。被災現場写真には、その写真を撮影した際に感じたことや考えたことなどを文章で添えています。
展示被災物は【津波の破壊力、火災の激しさなど、物理的な破壊力等が一見してわかるもの】【災害によって奪われた日常を象徴する生活用品や、震災以前の日常の記憶を呼び起こすようなもの】という2種類に類別されます。
被災現場では、足元を埋め尽くす様々な日用品が、私たちに何かを語りかけてくるように感じました。その言葉を物語として表現し、それぞれの被災物に添えています。
さらに、震災発生からの2年間、被災地で生活する中で得られた様々な情報や、調査活動から見えてきた課題などを【東日本大震災を考えるためのキーワード】として文章化し、展示資料と並行する形で添えることとしました。
依然として震災の只中にある現在、まとまりのある文脈で、ものを語れる時期ではないとの判断からあえてそのような展示としています。文字量が膨大で、煩雑な展示空間となっていますが、趣旨をご理解の上ご了承ください。時間をかけ、震災についてじっくりと考えていただけることを願っています。
「反省とは未来を考えること」ではないでしょうか。 なぜあれほど甚大な被害が発生してしまったのか、私たちがこれから考えるべきことは何なのか。リアス・アーク美術館は皆さんとともにその課題を共有し、未来の為に、地域復興の一翼を担っていきたいと考えております。世代や地域を越えた、より多くの方々に本展をご鑑賞いただければ幸いです。
最期に、東日本大震災で亡くなられた方々のご冥福を、心よりお祈りいたします。また全ての震災災者に、明るい未来が訪れることを心よりお祈りいたします。
2013年4月3日